蛇遣い座は太陽が実際に手前を通過していく本物の星座ですが、星占いの十二星座は春分から測った十二等分の枠として定義されているため、空でいくつ星座が見つかっても、その数が増えることはありません。
星占いが使う十二星座に、蛇遣い座を含めた13番目の星座は存在しません。これは新しい発見によって覆るような話ではなく、そもそも星座をどう定義しているかという出発点の違いによるものです。蛇遣い座自体は実在する星座で、太陽が毎年その手前を通過していく期間も確かにあります。ただし星占いで使う十二星座は星座そのものではなく、春分点を基準にした十二等分の枠であり、実在する星座が空にいくつあろうと、その数には左右されません。
蛇遣い座は「へびつかい座」と読み、へびを抱える人の姿として描かれる、記録に残る星座の中でも特に古いものの一つです。古代ギリシャの伝承では、死者をよみがえらせる方法を知っていたとされる医術の神アスクレピオスと結び付けられてきました。空ではさそり座といて座の間に位置していて、太陽が一年かけてたどる見かけの通り道、黄道と呼ばれる線がその南の端をかすめています。
蛇遣い座がニュースになる理由は、天文学の整理作業にあります。1930年、国際天文学連合が88ある星座すべてに正式な境界線を引き、それまで漠然と星の集まりでしかなかったものを、地図の国境のようにきっちり区切られた領域に変えました。境界線が決まったあとで黄道が通り抜ける領域を数えると、答えは十二ではなく十三になります。その一つ余分な領域が蛇遣い座です。
太陽が蛇遣い座の手前を通過するのはおよそ十七日間、十一月の終わりから十二月半ばにかけてです。空で起きていることとしては正確な観測ですが、星占いにとってはこれといって関係のない事実です。
西洋占星術が使う星座は、空を三十度ずつ十二等分した輪で、基準点は春分に固定されています。春分とは、北へ向かう太陽が、地球の赤道を空へ延長した線をちょうど横切る瞬間のことです。おひつじ座の始まりはこの瞬間そのものと定義されていて、残り十一の星座は等間隔で続き、十二個で輪をきっちり埋め尽くし、余りは出ません。
この方式は季節の折り返し点にちなんでトロピカル方式(回帰式)と呼ばれ、星の並びではなく季節の巡りをもとに組み立てられています。おひつじ座がどこから始まるかと尋ねれば、答えは春分からの角度で返ってきて、星図に問い合わせることはありません。だからこそ星図の側で何が起ころうと、この方式が答えを変えることはないのです。円を十二等分するというのは算数の事実であり、黄道沿いに新しい星座が見つかったところで、新しい山脈が見つかっても方位磁石の目盛りの数が変わらないのと同じように、変わりようがありません。
とはいえ、この話の裏には本物の天文現象があります。地球の自転軸はまっすぐ固定されておらず、勢いの落ちてきたこまのようにゆっくりと首を振っていて、一周するのに約二万六千年かかります。この動きを歳差と呼び、軸が振れるのに合わせて春分点は星々を背景に西へじわじわとずれていき、その速さは七十二年で約一度です。星座の名前が季節の枠に固定されてからおよそ二千年が経っているので、そのずれの合計はすでに星座一つ分ほどの幅に達しています。
つまり「十三番目の星座」という見出しにも一片の真実は含まれています。トロピカル方式が太陽をおひつじ座にあると告げているとき、太陽が実際に手前を通過している星々はうお座のものです。もっとも、これは目新しい発見ではありません。歳差そのものは紀元前二世紀に天文学者ヒッパルコスがすでに記述していて、トロピカル方式を組み立てた人たちはその事実を知った上でこの方式を選んでいます。
星の位置を基準にする占星術も実在します。インドの伝統でジョーティシュとも呼ばれるサイデリアル方式は、春分ではなく星々の中に固定した基準点から測っていて、その星座はトロピカル方式のものよりおよそ二十四度ずれた位置にあります。ここが見出しでいつも抜け落ちる部分ですが、サイデリアル方式もやはり十二星座を使っていて、星を基準にした輪を三十度ずつ十二等分するのは同じであり、そこにも蛇遣い座は含まれていません。
仮に星座の境界線をそのまま星占いの区切りにしてみたらどうなるでしょうか。結果は使い物にならないものになりますが、その理由は誰が何を信じているかとは関係のない、仕組み上の問題です。
記事で言われる蛇遣い座の期間はいて座の範囲にすっぽり収まっているため、その記事で割り当てられた人はもともといて座で、今もいて座のままです。出生図の何かが動いたわけではなく、位置が計算し直されたわけでもなく、どこかの占星術の団体が改定を発表したわけでもありません。
この話は数年おきに繰り返し話題になりますが、たいていのきっかけは星座について解説した教育向けのページで、それがまるでどこかの宇宙機関が星占いの欄を監査したかのように伝えられてしまうというものです。宇宙機関は星占いを行っておらず、もとのページ自体にも普通はそう明記されています。ニュースとして伝わっているのは変更ではなく、古代からすでに決着していたこと、つまり星座と星座は名前を共有していても、位置を共有しなくなってからずいぶん長い年月がたっているという事実の言い直しにすぎません。
正直に言うと、この問いの立て方自体に無理があります。星座と星座のどちらが本物かと尋ねるのは、暦の上の一か月と月の満ち欠けによる一か月のどちらが本物の一か月かと尋ねるようなものです。どちらもきちんと定義され、どちらも一貫して使われていて、それぞれ別の問いに答えています。トロピカル方式は星の名前を借りた季節の枠組みで、サイデリアル方式は星そのものを基準にした枠組みで、星座の境界線は天文学者の目録整理の道具です。この三つを比べ合わせても、どれかが否定されるわけではありません。
だからといって、それぞれの星座に語られてきた性格の説明そのものが証明されているわけでもありません。それらは何世紀もの間、書き継がれ読み継がれてきた解釈であって、検証を経た事実ではなく、そのつもりで受け取っておくのがちょうどいい距離感です。ただ、十三番目の星座がひそかに登場して自分がこれまで読んできた説明を無効にしてしまったのではないかと気になっているなら、その心配は不要です。星占いが立っている枠組みはもともと十二等分で、誰かが星座の境界線を引くよりずっと前から十二等分であり、十三番目を新しく取り込む仕組み自体を持っていません。